第2章 行政・災害時小動物救護対策本部
災害時における被災した動物の救護活動は、国(国土交通省・環境省)、都道府県、政令指定都市、中核都市および各市町村に、「災害時動物救護セクション」を常設し、業務体制の確立を図るとともに、災害対策予算の中に動物救護にかかわる予算を計上する。
災害時の動物救援組織の基幹となる関連5団体{(財)日本動物愛護協会、(社)日本動物福祉協会、(社)日本愛玩動物協会、(社)日本動物保護管理協会、(社)日本獣医師会}は、平時より動物救護シミュレーション、ボランティアの育成と研修活動などを含めた組織強化と啓蒙活動を行うものとする。
動物救援本部には、自治体の「災害時動物救護セクション」との連携により、第1章に記載した2つのセンター(救護動物保護および治療センター)を設置し、以下の業務を行うものとする。
1.被災地域の飼主よりの受託小動物の飼育管理
2.飼主不明動物の保護および飼育管理
3.行政が行う規制区域内などに残された動物への給餌活動の支援
4.全ての保護管理動物の獣医療救助
5.引き取り手のいない収容動物の新しい飼主探し
以上の業務を行うために、動物救援対策本部には事務局、総務部、経理部、管理部、資材調達部並びに広報記録部の部署を置くものとする。
その他本章では、救護動物保護センター(健常動物収容部門)の施設並びに必要備品・消耗品などの調達、業務内容と小動物収容業務の実際について触れている。
災害時における被災した動物の救護活動は「動物の愛護および管理に関する法律」の趣旨から被災者の救護活動とあわせて行政と動物愛護団体など協力して敏速に対応しなければならない。
被災した動物とは、被災者が飼育している小動物・伴侶動物、災害時の混乱のために飼育者が判明しない動物(被災地での放浪動物)、これらを含めた負傷動物が考えられるが、これらを包括した救護活動が必要となる。
Ⅰ平時のセクションの確立
〔行政としての事前対応〕
1緊急災害発生と同時または予知の段階ですみやかな行動が取れるように、
国(国土交通省・環境省)、
都道府県、政令指定都市、中核都市および各市町村に、
「災害時動物救護セクション」を設け災害時における
業務体制の確立を図るとともに、
災害対策予算の中に動物救護にかかわる予算を計上する。
2市町村の責任部署としては、狂犬病予防業務担当部署が当たる事が望ましい。
1)畜犬登録数より、被災地域の犬の頭数を把握する事で、
救護施設の規模などと対策事業にかかわる
人員体制など計画が建てやすい。
2)放浪動物(特に犬)の収容業務が迅速に行える。
3)災害対策予算の中に、当初の緊急対応と設備構築に
必要とする予算を計上するとともに、
初期収容の為に各市町村にゲージを最小限常時確保しておき、
不足に応じ近隣の市町村より借用するものとする。
3施設の候補地の選定
1)人の避難指定地域の選定に併せて、動物救護施設の予定地の
選定をしておく。
2)災害発生直後は、避難所に動物収容施設を併設する。
4小動物を含めた防災訓練
行政は防災訓練などを行う場合、小動物も対象とする。
〔緊急災害時動物救援本部としての事前対応〕
1緊急災害時動物救援本部の充実をはかり、関連5団体
{(財)日本動物愛護協会、(社)日本動物福祉協会、
(社)日本愛玩動物協会、(社)日本動物保護管理協会、
(社)日本獣医師会}
が動物救護対策本部を立ち上げ運営する。
2各団体は平時に動物救護のためのシミュレーションを行い、
災害時実働可能な組織強化と啓蒙活動を行う。
3動物救護ボランティアの育成と研修活動を(社)
日本獣医師会地方会ブロックと
同様に、全国を9ブロック
(北海道、東北、関東、東京、中部、近畿、中国、四国、九州ブロック)
に分け啓蒙・周知させる。4緊急災害時動物救援本部5団体以外の
愛護団体・協力団体・協力企業との初期活動における協力体制の
シミュレーションをしておく。
Ⅱ緊急災害発生時の初期活動と動物救護対策本部の立ち上げ
災害発生時、もしくは発生予想時に行政の動物救援セクションと
緊急災害時動物救援本部が協議し、
動物救護対策本部の立ち上げの可否について検討する。
〔小動物救援対策本部〕
1対策本部の基本業務次の動物救護活動を行うため、救護動物保護センターと救護動物治療センターを開設し、その運営管理を行う。
1)被災地域の飼主よりの受託小動物の飼育管理
2)飼主不明動物の保護および飼育管理
3)行政が行う規制区域内などに残された動物への給餌活動の支援
4)全ての保護管理動物の獣医療救助
5)引き取り手のいない収容動物の新しい飼主探し
2国・自治体の災害対策本部と連動連絡し、自治体の「災害時動物救護セクション」と協議し、被災地域の動物などの頭数を把握した上で、本部設置場所、開設日時、施設規模、資金調達などについて決定する。
3小動物救援対策本部長・救護動物保護センター長は行政または緊急災害時動物救援本部から選任し、救護動物治療センター長は獣医師会より選任する。
4小動物救援対策本部には次の部署を置く
1)事務局
2)総務部
3)経理部
4)管理部
a)施設管理:各施設の立ち上げ、補充、補修
b)人員管理:一般ボランティア、ボランティア獣医師の受け入れと人員配置管理
5)資材調達部医薬品、器具機材、ペットフード、ペット用品、
ボランティア用品、備品消耗品の調達
6)広報記録部
a)情報収集
ア)災害の規模、被災地域、現況並びに今後の推移に関すること
イ)被災者の数並びに避難方法と避難場所(施設)に関すること
ウ)被災地内で飼育されていた動物の種類と推定頭数
(犬の登録台帳を基に)に関すること
エ)対策本部の活動状況並びに支援体制に関すること
オ)交通網並びに通行手段に関すること
カ)動物救護センターに関すること
①小動物救援対策本部の設置の可否
②小動物救援対策本部設置場所と設置必要数
③派遣獣医師に関すること
④必要獣医師数、動員体制・手段、支援体制作り
必要資材の調達と確保に関すること
b)各種動物愛護団体の活動に関すること
5情報提供
全ての情報は公開するを原則とする。
各種情報の開示は、小動物救援対策本部を通し広報部門が行い、
情報の発信を一本化する。
公開する内容については、可能な限り事前に関連部門と連絡の上行い、
公開内容は記録に残す。
6マスコミ対応
1)許可無く収容施設への立ち入り禁止の徹底
2)取材は広報部門担当者が対応し、
他の者の取材対応は許可を受けた者のみが行う
3)定期的に、マスコミ対応時間を設定し、
小動物救援対策本部の現況説明を行う
a)収容動物の推移並びに状況
b)獣医師の活動内容
c)獣医療ボランティアの活動内容
d)小動物救援対策本部活動の問題点と支援要請
e)その他7救護動物保護センター8救護動物治療センター
〔動物救護対策本部としての活動〕
1現地災害対策本部との連絡連動を密にし動物救護のため日本赤十字社、
その他の支援団体への救援資金・物資の要請。
2行政からの人員の出向、連絡網の確認、施設・規模の調整など施設、
体制の確保や、土地・施設の借り入れ契約・施設内設備のリース契約・
運搬用自動車の確保など、行政と支援団体などとの
調整を図り体制や施設を整備する。
1)施設の立ち上げ土地の確保は、周辺環境(交通・住宅・臭気・上下水道など)を
考慮の上公的な土地が望ましいが、諸般の事情により民有地(・施設)の利用も可とする。
尚、立ち上げは可及的速やかに行うものとする。
a)本部・管理棟
b)ミーティング棟
c)宿泊棟(男女別・衛生施設を含む)
d)救援動物保護センター関連施設(別記)
e)救援動物治療センター関連施設(別記)
2)備品・消耗品など
a)事務用机・椅子・事務用品一式冷暖房装置換気装置
b)電話・携帯電話・ファックス(一般用・内部連絡用・FAX用に分ける)
c)重要書類・現金収納庫
d)パソコン・周辺機器(事務管理用・ホームページ・インターネット用)
e)インスタントカメラおよびデジタルカメラ
3)災害動物救助車両と専任運転手の確保傷病動物運搬・
資材の運搬に欠かせない為、行政が確保する。
3被災地域の小動物飼育実態調査の開始災害発生初期に狂犬病登録頭数から
被災地区の概数を把握するとともに、住宅地図をもとに、
避難場所などでの聞き取り調査をし犬・猫などの実態の把握に努める。
4個人・企業・団体から直接送られて来る動物救援物資などの受け入れと、整理、
送り主への受け取り通知と追跡、礼状送付と救援金募集通知と支援団体などへの依頼。
5各種書類作成
業務日誌(様式2-1)
救援物資受け入れ台帳・礼状発送台帳(様式2-2)
センター受付にて義援金受付・処理台帳(様式2-3)
救援物資・義援金礼状ハガキ(様式2-4)激励文取りまとめ台帳(様式2-5)
動物の一時保管契約書(様式2-6)
所有権放棄届け(様式2-9)
逸走動物の取得届けについての上申書(様式2-10)
「逸走動物」の保護管理一覧表(様式2-11)
誓約書(飼主引き取り用)(様式2-12)
誓約書(新しい飼主用)(様式2-13)
新しい飼主探しマニュアル(様式2-14)
飼育動物実体調査票(様式2-15)
6ボランティア受付とボランティアの確保対策、ボランティアの管理体制の確立
(様式2-16)(様式2-17)(様式3-3)(様式3-8)(様式3-9)
7ボランティア保険の加入
8協力関係団体との連絡と折衝
9救援金および運営資金の確保および義援金受け入れ口座の開設
10被災動物で治療の必要のない動物の保護
1)飼主が判明している動物の一時預かり
2)被災地域で逸走している動物で住民・行政が保護した動物の一時預かり
〔救護動物保護センター〕
1業務
1)被災地域の飼主の受託小動物の飼育管理
2)飼主不明小動物の保護管理および飼育管理
3)規制区域内などに残された犬猫への給餌活動
4)収容動物の新しい飼主探し
2動物救護保護センターには次の部署を置く
1)事務局
2)総務
3)経理
4)管理(施設管理・人員管理)
5)資材調達
6)広報記録
3保護動物の識別管理
1)飼主不明保護動物
2)飼主判明動物
a)所有継続動物
b)所有権放棄動物
Ⅲ小動物収容業務の流れ
〔収容区分け作業〕
救護動物治療センターの獣医師により、健常動物と傷病動物の区分けを行う。
1傷病動物と判断される場合には、飼主または搬送者を同道の上救護動物治療センターへ
動物を搬入する。治療などの実施状況に合わせて、順次「収容のための事務手続き」を行う。
2健常動物と判断された場合には、以下の「収容のための事務手続き」を行う。
〔収容のための業務=健常小動物で飼主が判明している場合〕
1各種様式への記載依頼(様式2-6)
2写真撮影(飼主と一緒に撮影)
3治療センター獣医師の健康診断実施。必要に応じ、各種予防措置の実施
4首輪、リードなどを確実に装着の上、収容舎に収容
5各種必要書類の交付(様式2-6)(様式2-7)(様式2-8)
〔収容のための業務=傷病小動物で飼主が判明している場合〕
1各種様式への記載依頼(様式2-6)(様式2-7)(様式2-8)
2写真撮影(飼主と一緒に撮影が不能な場合には、個別に撮影)
3必要処置が終了次第、病状および今後の処置などに付いて
飼主に説明をし、了解を求める
4飼主が持参した薬剤などを確認する
5首輪、リードなどを確実に装着の上、病畜舎に収容
6各種必要書類の交付
〔収容のための業務=飼主が判明していない場合〕
1飼主が判明している場合に準じ業務を行う(健常動物と傷病動物の区分けをし)(様式2-7)
2保護・収容場所に付いて、可能な限り詳細に聴取することこの場合、
備え付けの「地図」を有効に活用すること
3各種必要書類の交付