獣医師の仕事

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 北海道の酪農・畜産は、食生活の多様化による畜産物需要拡大と恵まれた土地資源を背景に順調に発展を遂げ、わが国最大の畜産物供給基地として、また、北海道農業を支える基幹部門として、大きく成長してきました。
 現在(2013年)、乳牛81.5万頭、肉牛52.0万頭、豚61.2万頭、採卵鶏695万羽が飼育され、ブロイラーも3,361万羽出荷されて、国民に安全で健康な乳・肉・卵など畜産物の提供に努めています。この他、馬も2.5万頭飼育され、競馬あるいは乗馬など、人とのふれあいや娯楽の提供などを担っています。
 これら家畜の健康を守っているのが、産業動物関係の獣医師です。家畜の診療はもとより、病気の予防、高病原性鳥インフルエンザ・口蹄疫などの農場における伝染病防疫、家畜の飼養衛管理の指導、牛乳の搾乳衛生指導など、家畜飼育農家の主治医・コンサルタントとして地域経済の振興に日夜努力しています。また、適切な産業動物医療の提供を通じ、人獣共通感染症の蔓延防止や畜産物の安全性を確保し、国民の健康と食の安全・安心に寄与しています。
 主として家畜の診療、病気の予防、受精卵移植など家畜の改良に従事している産業動物関係の獣医師は、農業共済団体獣医師730名、農協や会社関係獣医師140名、産業動物開業獣医師240名、家畜伝染病などの防疫、予防衛生に従事する家畜保健衛生の獣医師190名、その他、教育、研究、医薬品関係の獣医師290名など約1,590名近くの獣医師が会員として所属し、各方面で活躍しています。

  • 主な業務は次のとおりです。
  • ○牛・馬・豚・鶏など家畜の診療
  • ○病気の予防(検査、駆虫、ワクチネーションなど)健康検査(ドック)
  • ○家畜伝染性疾病の防疫(国内防疫、動物検疫)
  • ○家畜飼育農家の指導(飼養管理、経営指導など)
  • ○家畜の改良・増殖(人工授精・受精卵移植など)
  • ○家畜の疾病に関する試験研究
  • ○動物医薬品の安全性の確保
  • ○野生傷病鳥獣の診療、保護
  • ○魚病対応

 犬や猫などの動物とのふれあいは、人の心をなごませ、生活にうるおいを与え、特に高齢化社会と核家族化が進むなかで、これら犬・猫や小動物は“家族の一員”として位置づけられ、人々の健康と精神衛生に大きな役割を果たしています。これら小動物の“健康と福祉“を担っているのが、小動物関係の獣医師です。
 現在(2013)、北海道には340の小動物病院などで620名近くの獣医師が活躍しています。また、北海道大学、酪農学園大学および帯広畜産大学の獣医学部には、動物病院が附属し、小動物関係部門の研究や最先端の診療技術の指導普及に努めています。
 最近では、大学の付属病院のみならず、ヒトの病院と比べても遜色のない医療設備を備えた動物病院も少なくありません。
 動物の診療は、ご承知の様に物言わぬ動物相手ですし、犬猫はじめ鳥類、爬虫類そして魚類と多種にわたり、かつ診療科目も内科、外科、眼科、歯科などその領域も広く一括して担当しているのが現状です。
 小動物の診療は年々診断技術も治療法も進歩し、より適切でかつ手厚い医療をめざし担当獣医師も日夜研鑽を積み、期待される診療にと努力しています。
 動物の診療にあたっては、動物の病状および病態、検査の必要性や治療方針、予後そして診療料金などについて、十分な説明と飼い主の同意を得ながら治療を行うよう努めています。
 また、小動物の診療は人の医療における様な健康保険制度がありません。従って診療料金は人の医療負担額と比べどうしても割高感が生じますが、その点ご理解願います。われわれ獣医師は、動物の保護・福祉の原則(世界獣医学協会)を守りながら、動物の保護・福祉のため更に努めてまいります。

  • 動物の保護・福祉の原則
  • (1)飢えと渇きからの解放
  • (2)肉体的不快感および苦痛からの解放
  • (3)傷害および疾病からの解放
  • (4)恐怖および精神的苦痛からの解放
  • (5)本来の行動様式に従う自由
  • 小動物関係の主な業務は次のとおり
  • ○犬・猫・鳥類など伴侶動物の診療
  • ○犬・猫・鳥類など伴侶動物の健康相談
  • ○犬・猫・鳥類などの飼い方相談
  • ○病気の予防(検査、駆虫、ワクチネーションなど)
  • ○健康検査(血液検査、寄生虫検査など)
  • ○野生傷病鳥獣の診療・保護
  • ○伴侶動物の治療に関する試験・研究
  • ○伴侶動物の治療方法の確立

 動物の疾病予防や診療以外に獣医師が活躍している分野に人の健康に大きく関係している公衆衛生部門があります。道内では、約350名の獣医師が道や札幌市、函館市、小樽市、旭川市立の保健所や食肉衛生検査所において食品衛生監視員や環境衛生監視員、狂犬病予防員、と畜検査員などとして、住民の方々の健康を守るために働いております。また、大学や研究機関において各専門分野で研究を行っている獣医師もおります。

食品の安全性確保
 食品衛生法に基づき、食品の製造・販売施設や飲食店等の許認可のための調査や衛生指導、学校等給食施設の衛生指導を行っております。細菌やウイルス等による食中毒予防の指導、食中毒事件の調査や再発防止指導も重要な任務になっています。法令に違反する食品の発見や違反食品の回収確認も行っております。
 最近、食品製造企業等では、より安全な食品を製造するためHACCPシステムの導入を進めており、保健所においても企業がHACCPを導入する際の専門的な支援も行っています。

生活関連施設の衛生確保
 ホテルや公衆浴場など日常生活に密接に関係する営業施設を規程する諸法令に基づき許認可の調査や衛生指導を行っています。井戸水等使用施設での衛生指導や温泉利用の調査等も行っています。

食肉の安全性確保
 と畜場法やいわゆる食鳥検査法に基づき、食用とされる家畜、家禽の検査を行い疾病を排除し、安全な食肉の確保に努めています。と畜場や食鳥処理場の衛生指導等も行い食肉の微生物汚染防止に努めています。牛やめん山羊の伝達性海綿状脳症のスクリーニング検査も行っております。

狂犬病の予防
 保健所や動物管理(愛護)センターにおいて、狂犬病予防の啓発等を行うほか犬の適正な飼い方指導なども行っております。
 また、市町村から委託を受け道内各地の約1,200名の臨床獣医師が毎年、狂犬病予防注射の実施をしております。犬の飼い主や関係者の長年の努力により、我が国は狂犬病清浄国になっておりますが、周りの国々では狂犬病は撲滅されておらず、狂犬病に対しては十分な注意が必要です。

人獣共通感染症など試験研究
 大学や研究機関などに所属する獣医師は、人獣共通感染症や食中毒を起こす微生物など関する試験研究や研究成果を基にした感染予防等の啓発を行っています。
 また、毎年、道が中心となり市町村から提供を受けたキツネ等の死体を利用して各地域のエキノコックス感染状況を調査しています。

  • 〈食品衛生監視員〉
  • ○食品衛生法に基づく食品製造・販売施設等の監視指導。食品添加物やアレルギー物質表示の指導、違反食品の摘発や回収確認調査、食中毒予防啓発や食品に起因する健康被害の調査など
  • 〈環境衛生監視員〉
  • ○ホテルや旅館、公衆浴場、理・美容所やクリーニング施設等の監視指導。水道施 設や井戸水等使用施設、水泳プール等の衛生指導。温泉利用の調査など
  • 〈と畜検査員、食鳥検査員〉
  • ○食用として処理される家畜、家禽の検査、と畜場や食鳥処理場の衛生指導等。 牛やめん山羊の伝達性海綿状脳症のスクリーニング検査。生産者等への検査データの提供など
  • 〈狂犬病予防員〉
  • ○狂犬病予防のための啓発、非登録犬や予防注射未接種犬の抑留など

  北海道は豊かな自然環境に恵まれ、多くの野生鳥獣が生息しています。タンチョウヅル、シマフクロウ、オオジロワシなどの天然記念物はじめヒグマ、エゾシカ、キタキツネなど哺乳類やクマゲラ、カッコウ、エゾライチョウなど森林性鳥類、各地に点在する湖沼や湿地は、ハクチョウ、ガン、カモ類、シギ、チドリ類などの渡来地および繁殖地となっていて、海岸、島々は海鳥の繁殖地となっています。
 こうした多様な鳥獣の中には、生息環境の変化などにより生息数が減少し、絶滅の恐れがある種がある一方で、エゾシカのように増加により農林水産業や生態系に被害をもたらすなど、人間活動との軋轢を生じているものもあります。
 1989年には空知管内宮島沼でオオハクチョウ、マガンが散弾による鉛中毒で120羽も死亡しました。
 また、天然記念物のオジロワシ、オオワシの鉛中毒死が問題になってきました。エゾシカ猟の鉛弾を含んだ肉を食べることによる鉛中毒で、多くのオジロワシの中毒死が見つかっています。
 これらの事故に対して、獣医師はじめ多数の方々がボランティアとして救護活動に活躍しています。特にオジロワシの鉛中毒防止対策には、獣医師が中心となりシカ猟の鉛弾の使用中止、シカ死体の残滓適正処理などについて、道をはじめ関係団体に要請し、2004年より鉛弾禁止措置が実施されました。
 北海道庁では、1997年以降、これら野生傷病鳥獣に対し、適切な治療と保護を行い、自然に復帰させることを目的に「傷病鳥獣等保護委託業務」を北海道獣医師会に事業委託し、全道200カ所の動物病院、診療所などで治療、保護を行っており、野生鳥獣の保護に努めています。
 この事業で、2011年には429例、2012年には558例もの野生傷病鳥獣が、獣医師の治療を受けました。
 また、2008年には、世間を震撼させていた高病原性鳥インフルエンザウイルスが、道内で初めてオオハクチョウの死骸から検出されました。まず、根室管内野付半島、続いて佐呂間湖畔、2010年には稚内市大沼、浜中町、厚岸町と続きました。幸い、各職域の獣医師が中心になっての徹底した防疫活動により、鶏での発生を防ぐことが出来ました。
 更に、天売島は、大規模な海鳥の繁殖地が存在する貴重な島ですが、最近、野良ネコ、野生ネコが増え海鳥を補食するなどで、生息環境も脅かされています。このため、地元羽幌町から獣医師会に協力要請があり、会員の動物病院の協力のもと飼い猫の避妊および去勢手術、野生ネコ、野良ネコの捕獲、馴化、譲渡等の活動を進めています。
 その他、獣医師は動物園の動物についても、快適で健康な生活を営むことが出来るよう研究や工夫を行ったり、あるいは希少動物種属の増殖、特に北海道ではシマフクロウ、オオワシ、タンチョウ、ゼニガタアザラシなどの保護増殖に活躍しております。

  • 野生動物関係の主な業務は次のとおりです。
  • ○野生疾病鳥獣の診療と保護(看護)
  • ○野生疾病鳥獣の診療技術確立と研究
  • ○野生動物の診療技術の普及
  • ○疾病鳥獣のリハビリ技術の確立と研究
  • ○動物園動物の福祉と診療
  • ○油汚染海鳥などの救護活動

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